2013年6月9日日曜日
散文:色めがね
たまに世界が違って見えることがある。
見知らぬ土地を旅して帰ると、時々そうなる。
いつもの電車も、近所の街並みも、自分の部屋すらも、何かよそよそしい。
まるで色付きメガネを通して見ているかのよう。
遠い地で彷徨った不安がまとわりついて離れないのか。
道に迷った心のまま身体だけが帰ってきたというのか。
ああ、何でもいい、誰でもいいからつなぎとめてくれないか。
どうか私をこの世界に連れ戻して。
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先月のことになりますが、Steinwein & Sonsのピアノ工場見学に行って来ました。それまで知らなかったのですが、本社/工場がニューヨークにあるのです。
週一回、約3時間の工場見学ツアーが無料で一般公開されているのですが、一回約15人までの予約制のため、昨年12月に予約して約半年待ちました。
参加してみると、引退したベテラン職人さんがものすごく細かく説明してくれながらピアノ制作の各工程を巡る、実にぎっしりつまったツアーでした。
ピアノの木枠は、薄い板を何枚も特別な天然のりで張り合わせ、乾く前に型に沿って固定することであの形を作るのだということ、乾かすのに約半年かけるのだということ、乾かす過程での伸び縮みが木によって違うために最終的に微妙に全てのピアノが違うサイズになるのだということなど知りました。
また、昔ながらの製法を守り続けているために、スタインウェイのピアノはどれだけ古くなっても木枠さえ無事なら工場が引き取って修繕することが可能なのだそうです。
色々な情報を聞く度に「なるほどなあ」と感銘をうけ、またあの大きなピアノの1つ1つの部分が作られていく過程、それが組み合わされてピアノに完成される過程を見ること自体がとても大きな感激でした。
ただ、ともかく情報量が多く、工場の中には制作過程で発生する様々な匂いが立ちこめていたり、工場自体も少し郊外にあり、家に帰って来た時にはなんだかぼんやりしてしまい、散文のような気分になりました。ちなみに今はもうこちらの世界に戻って来ておりますのでどうかご心配なく。。。(実際こういうときは友達と他愛のない話をしたり、家事をしたり普通にしていると大抵平気になりますね。)