2026年9月5日土曜日

筆跡

(内容には関係ないのですが、先日夏の名残で食べて美味しかったジェラートです。)

子どもの頃、学校の授業中に指名されて黒板にチョークで書いた字が、歪ながらも自分の字だなと認識できることを不思議に思いました。

字を書く、という経験のほとんどを鉛筆でノートに書くことで積み上げてきて、チョークで黒板に書く経験は数回しかしていないのに、それでも筆跡というのは一貫しているのかと。結局自分の中にある「この字はこんな形、こういうふうに書きたい」という価値基準が一貫しているからかと納得しました。

そう考えると、持っている価値基準と、それを出力できる能力の間には、多かれ少なかれギャップがあるんだろうなと思われて、言うなれば、トップクラスの演奏家などは、価値基準そのもの(芸術性)とそれを安定して体現する技術と精神力を極めた人たちかと思います。

そのようなレベルではないながら、自分もピアノと共に人生を歩んでくることができて「こう弾きたい」という価値基準はそれなりにあるのだけれど、それを100%体現できているわけでもないのだよな、と思いつつ、人生もそうかなとも思います。

色々な人との出会いや経験の中で「こういう人になりたい。こういう人でありたい。」という価値観を更新しながら、だんだん上手になったり、調子が悪い日にはそう振る舞えなかったり。そういうことを繰り返して、その人が「こんな人だった」という軌跡が残っていくのかなと。

ヒット曲、"9 to 5"の作者としても有名なドリー・パートン(偉大なシンガーソングライターであると同時に、多大な音楽収益を人々に還元した人道支援家)が先日亡くなったのですが、追悼で様々な名言が取り上げられる中、雑誌『ピープル』(People)のインタビューの中で "I'm a very professional Dolly Parton."と語っているのを聞いて、彼女の見事な生き様も合わせて、自分も自分の専門家として人生を重ねて行きたいと思いを新たにしています。

2026年8月28日金曜日

夏の思い出


気がつけば8月も終盤、夏が終わろうとしています。

今年の夏は色々なところを旅することができました。主に親しい人々を訪ねてだったのですが、皆にとっては普段のままの忙しい生活の中から時間を割いて一緒に過ごしてくれて、近況や色々な話ができて、とてもありがたかったです。

そして色々な都市を訪れて思ったことは、月並みながら「世界は広い」でした。どれだけ滞在時間が短くても、その場に立てばその環境に気分が即座に適応するようで、場所の圧倒的な強さを感じました。地球の広さは認識するには大き過ぎて、移動した距離よりも、立ち寄って時間を過ごした場所を点として認識することしかできないように思います。そう考えると、点の数が多いほど「広い」世界を持っているとも言えるのかなとも思います。もちろん点が離れるほど環境は違うでしょうけれど、以前、散文:たくさんの世界にも書いたように、そこまで遠くに行く必要もないのかもしれません。

そして地球がどれだけ広くても、それを内面化していくのは自分次第なのかなあと思います。逆に「大変だー!」と思う状況も、世界で起こっているというより、自分の頭の中で主に起こっていることも多いのかも。。など、考える材料をたくさんもらった夏でした。


2026年7月6日月曜日

ピアノ連弾曲集 "Side by Side"

Red Leaf Pianoworksの初めての連弾曲集が発売になりました!

Side by Side cover art

私もこの為に書き下ろした初級者の為の”Cherry Blossom Walk”で参加しています。うららかな春の日に、家族や友人など親しい人たちと、桜並木を通り抜ける時の高揚感を描きました。できるだけ難易度を抑えて書いたところ、1番目に載せてもらうことになったので、曲集を手に取ってくれた先生方や生徒さんへの「ようこそ!」という曲になれて嬉しいです。

今回は私は参加しなかったのですが、先日テキサスのカンファレンスでお披露目となり、参加したRed Leafのメンバーがイベントの様子を記録してくれていました。先着順で参加した先生方が新作の連弾曲を一斉に初見で弾いていくというイベントで、参加者は楽譜を持って帰れる為人気のイベントなのだそうです。良い連弾曲集のレパートリーはいくらあっても困らないので(自分も楽譜屋さんに行く度に探しています)、先生方からも需要が高いのだなと思います。ぜひご覧ください!

ご興味を持っていただけた際には、楽譜はこちらから、そして全曲のプレイリストはこちらからご覧頂けます。

2026年6月30日火曜日

ニックス優勝!

先日ニューヨーク・ニックスが無事五戦目に勝利し、53年ぶりのNBA制覇を成し遂げました!当日の様子とその後の街の活気を書き残しておきたいと思います。

五戦目当日は、友達とブロードウェイにLost Boysを観に行ったので、街中のソワソワ感を感じることができました。

駅で見かけた応援の落書き。

試合時間と上演時間が重なったので、試合の経過を気にしつつ観劇を楽しみ、終演後にタイムズスクエアに向かいました。

残念ながらモニターでの中継はなかったですが、時々映る応援広告に期待が高まります。

試合速報を数秒ごとに携帯電話で確認しながら待つことしばらく、ついに優勝が決まり、友達とハグして喜びました。

「ニックスが勝った!ニックスが勝ったぞー!」と今出会ったばかりの知らない者同士喜びを分かち合っていたり、自然に"Let's go Knicks! Let's go Knicks!"のチャントが始まったりするのなどを見て、普段はスンとしているニューヨーカーたちも、実は屈託なく繋がれるこういう瞬間を待ち望んでのだ、ニックスのおかげで得難い瞬間が街に訪れたなと思いました。(実際に見た街の様子はこのように穏やかでしたが、その後一部暴徒化したファンによってバスが破壊されたりなどしたニュースは残念でした。)

その日のうちに優勝パレードの開催がマムダニ市長より発表され、お祝いムードがますます高まります。

選手や監督のインタビューや、チームの様子を見ているうちに、「こういうチームが優勝してくれてよかった」とすっかり惹かれてしまいました。追い詰められた状況を受け入れた上で最善を尽くすメンタリティーや、チームの為に必要なプレーをする選手が尊敬され、厳しい状況でこそお互いを励まし合うチームの文化にスポットライトが当たって、多くの人の共感を集めていることに希望を感じます。

優勝パレード直前の街ゆく人たち。
街の様子はさながらハロウィーンのようで、ニックスのグッズを身に付けた人でいっぱいでした。

数日後に行われた優勝パレードはバッテリーパークを出発し、「キャニオン・オブ・ヒーローズ」と呼ばれるブロードウェイ沿いを北上して市庁舎(City Hall)まで行進し、その後チームへの「市の鍵」授与式が行われました。当日は近隣で仕事があったので、混雑や交通規制に飲み込まれないように同僚と連絡を取り合って向かい、これもまたワクワクした気持ちになりました。

パレードが通った後の道の様子。まだまだたくさんの人出が見られます。

後にニュースで、City Hallでの授与式ではアリシア・キーズの『Empire State of Mind』のパフォーマンスや、選手や監督のスピーチもあり、晴れやかな祭典になったことを知りました。そしてなんといってもマムダニ市長の歴史に残る8分間のスピーチ — わずか0.4%と言われた勝率をひっくり返した第四戦を引き合いに出し、チームの一人一人の貢献を讃えつつ、ニューヨーク市はいつもそうやって逆境に立ち向かってきたと、街の団結をさらに深める手腕に感激しました。

ホームスタジアムの最寄り駅も、チームカラーでデコレーションされています。
(ちなみにニックスを通して青、白、オレンジがニューヨークのオフィシャルカラーだと知りました。)

そして今日からは、六番街沿いの通りが、対応する背番号にちなんで選手の名前に一時的に命名されるというニュースも入り、お祝いはまだまだ続きそうです。

2026年6月12日金曜日

Knicks in 5!

昨晩NBAのファイナルでNew York KnicksがSan Antonio Spursを相手に29点差をひっくり返す劇的な逆転勝利を納め、街が湧いています。

”Knicks in 5"という掛け声は、全7試合のうち4試合勝ったチームが優勝というルールの中、現在3-1でKnicksが相手チームのSpursをリードしていて、”五戦目で優勝”という意味で、仕事先でもメディアでも、今日はあちこちで聞かれました。

という詳細は今調べて知ったことで、Knicksがこのように大活躍をするまで知りませんでした。そもそもKnicksといえば、もう何十年もずっと負け続けていて、ニューヨーカーは愛を込めてジョークにしているイメージ(レイトショーでもよくネタに使われていたような。。。)だったので、「そんなに強いチームだったの?」「そもそもみんな揃ってそんなにバスケ好きだった?」とようやく興味を持ち始めたところです。

スラムダンク世代なので、バスケへの憧れはありますが、スポーツでここまで街全体が盛り上がるのを見るのは日本〜アメリカでの経験で初めてで(街を歩けば、老若男女問わず10人に一人はKnicksのTシャツを着ているイメージ)、なんだか好ましいなと見ています。友達に連れていってもらって、これまでになんとかバスケ、アイスホッケー、野球の試合は見にいったことがあるのですが、あらためてその経験を振り返って、そもそもアメリカでは地元チームへの愛が基本的に大きいのかもしれません。

ニューヨークを代表するBlack & White Cookiesも、チームカラーのBlue & Orange Cookiesとして売り出されていて、お祝いムードを盛り上げています。 

ちなみに芸術においては、物語を構築することが創作で、物語が生まれる状況を作り出すのが即興かと思いますが、スポーツは後者なんだなあとあらためて思いました。どういう結末になるか誰もわからない中で、キャラクター達とその命運に皆が心を動かされ、一所懸命応援している。そう思うと、人がスポーツに夢中になる気持ちが腑に落ちた気がしました。生まれ方はちがっても、やはり「物語」は人が生きるために必要なものなのだと思います。

チケット代の高さや、Watch Partyが政治的理由でキャンセルされたり、Watch Partyの後に逮捕者が出たり、現実的な問題もありますが、市長のサポートもあり、なんとか多くの人々が一緒になって、工夫をこらしてこの一大イベントを楽んでいるのはとても良いなと思います。

今の政治状況で、苦境に立たされている人たちの日常に複雑な気持ちで思いを馳せつつ、同じような気持ちを抱えて生きている人たちが、今こうして隣人と共に何かに夢中になれている状況は応援したいという気持ちです。

次の試合は土曜日、Knicks in 5が達成なるかどうか。見守りたいと思います。