2026年4月12日日曜日

散文:深まってゆくもの



友達の顔に、かつてはなかった目尻の皺を認めて嬉しくなった。

このような長い付き合いができるとは。
出会った頃には助けてもらうばかりだった関係が、
自分も力になれるようになった。

お互いの人生を付かず離れず見守りながら、
一緒に年を重ねていけるとは。

前よりも更に柔和になった笑顔を見つめながら
そんなことを思ったのは
もちろん秘密。

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自分に対しても、自分の身近な人に対しても、歳を重ねることに切なさを感じることがあります。でもそれは、お互い元気にやっていて、比べる過去があるほど長い期間に渡って関係を築いてこられたからなのだ。そう気づいた途端、とても愛しく誇らしい気持ちになりました。

2026年4月10日金曜日

「人間だもの」

他者の自分に対する対応は、必ずしも自分の振る舞いや意図への妥当な評価とは限らない、とは分かっていても、やはり人に冷たくされれば堪え、優しくされればほろりとなるのが「人間だもの」と思います。

先日友人のミュージカルのリーディングを観に行って、そこで隣り合わせた人との一期一会に後者を実感しました。

会場はニューヨークのミッドタウンのディナーシアターで、テーブル席が所狭しと並んでいる奥にステージのあるキャバレークラブでした。四人がけの丸テーブルに、チケットと到着時間によって順に案内されるので、一人で行くと自然と相席になります。(誰かと誘い合わせて行けば良いのですが、思いついたら割と一人で行ってしまいます。)相席になったのは感じの良い女性二人で、席についてそれぞれメニューを見たりして雰囲気を探っていると、どうやら二人は共通の知り合いがいるようで、会話が弾み始めました。そういうことならと、あえて気を遣わせないように黙々と注文したお料理を食べたりして開演前の時間を過ごしていました。いざショーが始まるとなった時に、演出の一環で、直前に各テーブルに配られていた飴を観客全員で食べる、という瞬間がありました。状況が完全には把握できずに躊躇っていた私に、すっと隣の女性がテーブル上の飴を一個私の方に差し出してくれました。思いがけない親切にありがとうと見上げると、なんてことないといった穏やかな笑顔で応えてくれました。おかげで私もその遊び心溢れる瞬間に参加することができて、飴の美味しさと、その人の優しさをしみじみと感じながら、会場と一体となってショーを楽しむことができました。気にしていないつもりでしたが、アウェーな場所で一瞬不安になった時に、誰かが気にかけて輪に招き入れてくれたことが深く心に沁みました。

冒頭の話に戻ると、今回傾けてもらった親切は私の存在への評価ではなく、あきらかに彼女の人徳です。それでいて、それに触れた私は大いに癒されました。そういう、さりげなく大きなインパクトのある親切は、とても尊いものだと思います。自分もそういう風に人に接することができるようになりたいものです。

2026年4月9日木曜日

カンファレンスを経て思ったこと

先日無事に、シカゴで行われた音楽教育のカンファレンスに、Red Leaf Pianoworksの一員として参加することができました。

ブースを訪れて下さった方が、私の楽譜集を目の前で手に取って、じっくりと最後までページをめくって、そしてお会計に持ってきて下さった時の感慨は、これまで感じたことのないものでした。実際に弾いて気に入ってもらえるといいな、長く弾いてもらえる曲が見つかるといいなあ、と願いを込めながらサインをさせてもらって送り出しました。

カンファレンスに参加してよかったことのもう一つは、Red Leaf Pianoworksの作曲家の仲間と初めて実際に会って、ブースを切り盛りしたり、ショーケースをしたり、設営・撤収したりという実務の合間に、作曲やピアノ教室の運営、そして人生についても様々な話をできたことです。Red Leaf Pianoworksのメンバーはカナダ在住の作曲家が多いものの、世界各国に根ざしています。こんなにいろんなところで生きている人たちが、音楽を通して出会って、お互いに深く共感できることに感激しました。

そして個人的に思ったこととして、現在自分はミュージカル、コンサート音楽、教育的ピアノ音楽、という三つのジャンルに、それぞれコミュニティーを通して作曲家として関わらせてもらっているのだなということでした。一つのジャンルを自分の居場所と定めて、作品を重ね作風を深めている作曲家を尊敬しますし、どのジャンルにおいても自分はど真ん中ではない、と感じて肩身の狭い思いをすることも多々あります。一方で、あるジャンルで学んだことを他のジャンルでの作曲にも応用できるのは楽しいですし、自分の歩んできた軌跡のユニークさでもあるかな、と思えるようにもなってきました。

NPOに関わる活動も段々と増え、更に尊敬するアーティストをfeatureする活動にも興味を持っているのですが、自分自身の作曲も、もっと積極的に重ねていきたいなとの思いを新たにしました。

最後に、一緒にカンファレンスを過ごしたRed Leafの仲間達の、楽譜の集合写真を添えて…。


2026年3月16日月曜日

ピアノ小曲集

2024年から、Red Leaf Pianoworksという作曲家集団に参加させてもらっています。主にカナダとアメリカを拠点に活動する作曲家が所属していて、ピアノを学ぶ人たちに向けて新しい作品を生み出すことに情熱を傾けています。

毎年この団体を通して、一冊ずつピアノ小曲集を出させてもらっていて、この度ようやく三冊目を出版することができました。先日プリントに出して、仕上がった楽譜を受け取ると、やはり感慨深いものがあります。

毎回テーマを選んで曲を構成するのですが、今回のコレクションは「リズムとグルーヴ」を中心にGroove Studiesというタイトルで8曲を集めました。楽譜付きのビデオと、一曲ずつの演奏ビデオの一曲目をご紹介させて頂きます。


今月、音楽教育に携わる人々が一堂に会するカンファレンスにRed Leaf Pianoworksの代表として参加するので、そちらに間に合うようにこの数ヶ月間取り組んできました。

アメリカが混乱を極める現在、自分にできることは何かと自問する中で、必ずしも社会派ではないこの作品作りにこだわることへの葛藤もありました。それでも、どんな作品でもその時の自分の集大成なのだから、全力で作り上げることは機会に恵まれたことへの責任でもある、と思うに至りました。

できるだけ広く、多くのピアノを愛する皆さんにお届けしたいと思います。