2017年4月22日土曜日

The Gray Wolf Premiere


先月の作曲の活動の中で大きかったこととして、Piano Quintetの為の"The Gray Wolf"の初演がありました。

このごろ器楽曲の作曲においては「音楽だけでどこまで物語を語れるか」ということに興味があり、この曲はその試みを押し進めたものとなりました。

実際には、演奏会ではタイトルやプログラムノートの助けを借りて、お客さんにあらかじめ内容をある程度把握してもらった上で聴いてもらう形式をとっているのですが、それでも紙芝居を見る時のように、お客さん自身の想像力を使ってもらいながら、のめり込んで聴いてもらえる物語りを音楽で実現したい、というのが目標です。

初演は素晴らしく、最後の音が鳴り響いた時に「ああ、曲が無事に生まれた。」と感激しました。お客さんも、しばらくの余韻を経てから拍手を送ってくれて、とてもありがく、忘れられない素晴らしい夜となりました。

また音源が公開できる準備が整い次第あらためてご紹介させて頂きたいと思いますが、以下にプログラムノートを和訳したものを載せさせて頂きます。

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『狼娘の島』

この曲はジョージ・マクドナルドの短編小説『狼娘の島』(1871年)に着想を得て書かれました。小説は、若い狼娘を主人公とし、彼女がある青年と出会うことで浮き彫りになる自身の二面性に対する内面的な葛藤を描いています。

物語はシェトランド諸島の、ある嵐の夜を舞台に始まります。英国から来た若い学生が仲間とはぐれ、雨の中一人で荒れ地を彷徨っていました。嵐の中、彼は思いがけず若い娘と出会い、彼女の母親の住む小屋に避難させてもらうことになります。青年はその不思議で美しい女性に強く惹かれますが、同時に鮮やかな青い目で彼女が彼を見つめる時の、不気味で「貪欲な」眼差しには嫌悪感を覚えるのでした。

娘の母親と夕食を共にした後(彼女は何も食べません)、青年は夜の眠りにつきます。真夜中、彼は唐突に獰猛な獣に襲われ目を覚まします。彼は獣と格闘し、その首を強く摑まえましたが、逃げられました。

翌朝、青年は自分の手形が娘の首に痣として残っているのを目にし、衝撃を受けます。彼はついに、娘と彼を襲った獰猛な狼が同一の存在であったことを悟ります。

青年は逃げ出し、大きな灰色の狼が彼の後を追いました。しかし狼がまさに彼に追いついたその瞬間、彼女は何とか人間の自分に戻ることができました。青年は不意に彼の腕の中で泣いている娘に気がついたのでした。彼女は彼を逃してやりました。そして彼が荒れ地の向こうから振り返った時、崖の淵に手を固く握り締めて立っている娘の姿を目にしましたが、彼女はもう彼を追って来ようとはしませんでした。

岡田あゆみ

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