2023年8月19日土曜日

歌と物語と音楽と「異国ラビリンス」大阪公演 チケット発売開始!

歌と物語と音楽と「異国ラビリンス」大阪公演のお知らせです!


2023年9月29日(金)19:00開演

ドルチェ・アートホールOsaka(大阪梅田駅 徒歩3分)

出演:タイソン大屋/田中美央/内田靖子/秋本奈緒美/奥田祐(ピアノ)


芥川龍之介・谷崎潤一郎の異国情緒あふれる近代日本文学、そしてウィリアム・トレヴァーによる旅情世界を朗読、歌と生演奏でお届けします。音楽朗読劇『オン・ザ・ザッテレ』からのシーンと歌もプログラムに含まれていて、素晴らしい出演者の皆さんによる、楽しみすぎるコンサートです!!


異国への憧憬を呼び覚ます素敵なチラシの完成と共に、本日8/19 10:00よりチケット発売中!


https://t.livepocket.jp/e/onpuma2023


今年は秋に日本で自分の関わった作品の公演に恵まれ、ありがたい気持ちでいっぱいです。


関西の皆様、ぜひ10/1音楽朗読劇『オン・ザ・ザッテレ』神戸公演と合わせて、こちらのコンサートにもお越し頂けたら幸いです。よろしくお願いします

2023年8月5日土曜日

ミュージカル創作ワークショップ 有料アーカイブ動画 〜AABA形式、CEソング【分析編】〜


ミュージカルライターズジャパンで開催してきたミュージカル創作ワークショップの有料アーカイブ動画が新たに公開されました!


初回であるAABA形式の回と、6月に終えたばかりのCEソング【分析編】が加わって、これでここまで担当させて頂いたワークショップの動画が全て公開されたことになります。コツコツと積み重ねてきたワークショップが、これから興味を持って下さった方にいつでもアクセスして頂けるようになって嬉しいです。もちろんWSにご参加下さった方の復習用にも!


以下に改めてリンクをご紹介させて頂きます。

「ミュージカル創作ワークショップ2022 第1回」AABA形式 (アーカイブ動画) <全3回>

「ミュージカル創作ワークショップ 第2回(1)」CEソング【導入編】アーカイブ動画 <全2回>

「ミュージカル創作ワークショップ 第2回(2)」CEソング【分析編】アーカイブ動画 <全2回>


ミュージカルを作っている・作りたい方はもちろん、ミュージカルの作りに興味のある方にも、ぜひたくさん観ていただけたらと願っています

2023年8月3日木曜日

今思うハノンの良さ(その2)


ハノンピアノ教本に対する否定的な意見で目にしたものに、「ハノンを指の独立や指や上腕の強化の目的で使うと手を痛める可能性があり、また音楽的でない機械的な反復は生徒から音楽を聴く姿勢を奪ってしまう。」というものがありました。


ハノンが音楽的でないという見方には前回の投稿で考察した通り異論がありますが、故障に繋がりかねないという指摘はわからなくもないと思いました。


ただ、何を得る目的でその教材に取り組むか次第という気がしています。


確かに、ある程度上達した学習者がずっとハノンにこだわる必要はないと思います。既にスケール、コード、アルペジオを学習していて、様々な練習曲にアクセスできるなら、そちらに時間をかけたほうが良いと思います。ただ私は今、ハノンは導入課題としてとても優れているのではないか、と考えています。


良いと思う点は2点あって、1点目は楽譜が自在に読めるようになる前から沢山の音を弾けること、2点目は自分で出す音をコントロールする練習になること、です。


1点目については、ピアノを習い始めの生徒さんは並行して様々なことを学ばなくてはならず、特に読譜の習得には時間がかかるので、導入のメソッド本に載っている曲を弾くだけでは鍵盤に触れられる機会が非常に限られてしまいます。その点ハノンは、音のパターンを理解してしまえば読譜を解さずに弾けるので、沢山の音を弾く中で鍵盤に対しての体の使い方を自分なりに掴める機会を担保してくれると感じます。(もちろん姿勢や手や腕の使い方についての教師のフィードバックは不可欠ですが)


2点目は、弾けるようになったハノンをアーティキュレーションとリズム等様々なバリエーションで弾くことで、意識の中で自分の出す音を操作できる練習になる所が良いと思っています。というのも、読譜に手一杯の状態では自分が出している音を客観的に聴くことが難しいですが、一度パターンを習得したハノンなら「スタッカートで弾くぞ」と思って、そのように弾こうとする中で、指から感じる感覚や耳から入ってきた音と関連させて、主体的に音を作っていくことができます。また、「今はこのパターン」というのを全曲通して維持するのも初めは難しいので、それも良い練習になるなと感じています。


私自身、つい最近までそれほどハノンを導入時から積極的に使っていたわけではないのですが、オンラインの生徒さんが増える中で、実際にその場で弾いて見せたり、手を持ってあげて力加減を伝えたりできない中で、どうすれば早い段階から力の使い方を掴んでもらえるだろうかと試行錯誤する中で辿り着きました。


今思うのは、ハノンは読譜の学習に時間がかかる時期にも、体の使い方や主体的な音への関わり方のトレーニングも並行して進めることを可能にしてくれると感じています。これからさらに取り組んでいく中でまた思うことは変わってくるかもしれませんが、ひとまず今「ハノンいいなあ!」と盛り上がっているのでこれを機会にまとめさせて頂きました。


ちなみに、せっかくなので2つほどおもしろハノン情報を。


1つ目は、NHKのららら♪クラシックのハノン特集の回で取り上げられていて知ったのですが、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番第3楽章でハノンピアノ教本第一番が引用されているのです。Wikipediaによると、この曲はショスタコーヴィチが息子さんの19歳のお誕生日の為に書いたもので、息子さんが音楽院の卒業コンサートで初演したそうです。ハノンを曲中の3つのテーマのうちの一つに選んだのは卒業にちなんでのジョークだそうです。なんともチャーミングなのでぜひ聴いてみてください。澤田侑花さんの演奏がまた素晴らしいです。



2つ目は、ピアニストのマルク=アンドレ・アムランが今年のエープリルフールについた嘘で、ハノンピアノ教本の3枚組CDを出すというものです。あまりに素敵に弾くので、「えええ?」と思いつつ少し信じてしまいそうになりました。日本語字幕は残念ながらついていないのですが、こちらも良ければぜひ見てみて下さい。



2023年8月2日水曜日

今思うハノンの良さ(その1)

今日は少し、最近のピアノティーチングで感じていることを書きたいと思います。

この間ある生徒さんが、ハノンピアノ教本の第六番を弾き終わってこう言ってくれました。

「ハノンはとてもメロディックだと思うよ。なんでかわかる?それぞれのグループで半音の位置が違うからだよ。」

まだピアノを始めて一年と少しながら、音楽理論にも興味を持って日頃から色々な鋭い質問をしてくれる小学生の生徒さんなのですが、このコメントには脱帽でした。(以前「長調と短調以外に音階はないの?」と質問してくれた際に少しだけ教会旋法の話をしたこともあったので、その時に得たアイディアを無意識に応用してくれたのだと思います。)

白鍵だけで弾くハノンがハ長調をベースにしているのは確かですが、彼が指摘してくれた通り、個々のグループだけを見ればそれぞれが微妙に異なるメロディーであり、さらに言えば異なる教会旋法に属しているとも解釈できる、という視点に気づかせてもらってとても興奮しました。

以下にビデオを交えて実際に響きを聴きながら考察してみたいと思います。

まず教会旋法についてですが、以下、ヤマハの音楽用語ダスより定義を引用します。

中世ヨーロッパ音楽の基本となる7種類の音階。ドレミファソラシのそれぞれを基音として、各々の音から出発するスケール。アイオニアン・スケールは長音階、エオリアン・スケールは短音階として残っている。ジャズで使われるモード理論もここから派生している。

実際に弾いてみるとこのような響きです。


私は個人的には、これだとどれもそれなりにハ長調に聴こえてしまうのですが、聞き慣れたメロディーで試してみると違いがよくわかります。きらきら星をそれぞれの旋法で弾いてみました。


頭の中で一緒に歌っていると少しずつ違った音が鳴るので、度々小さな驚きが感じられます。ここまで来たところで、ハノンピアノ教本(原題はThe Virtuoso Pianist in 60 Exercises)の第一番の上行型を聴いてみましょう。


この流れで聴くと聴き慣れたハノンも「なるほどグループごとに表情が違うな!」と実感して頂けるのではないかと思います。ちなみに、もしハノンをハ長調ではなく、ハ長調の音階を基音とする長調の連なりとして弾くとこのような響きになります。


確かにそれぞれは長調の響きなのですが、ホ長調とロ長調から次の音へ行くときに増二度が発生してしまうので(ビデオではロ長調で終わっているのでニ個目の増二度は含まれていません)、正しく弾けていてもソワソワしてしまいます。これはこれで良い移調の練習になりそうですが。

以上、「単調で音楽的でない」と捉えられることも少なくないハノンですが、白鍵だけを使うことによって指の動きは同じながら実は音の関係は移ろっていること、よく耳を澄ますと飽きることのないメロディーの連なりであることに生徒さんのおかげで気づけて、旋法の観点から考察することができました。一緒に体験して下さりありがとうございます!

ちなみに、それでもハノンを弾き慣れてくると、それぞれのグループを大きな塊(始まりの音とその装飾)として捉えていると思うので、結局全体を大きなハ長調の音階と感じていて、実際に旋法としてクリアに感じている訳ではないと思います。ただ、弾いていてしみじみと飽きないのはこういう理由なんだなととても納得しています。

ハノンについてはこの気付きのほかに、導入課題としてとても有効だなとも感じているので、次回はその視点から思うことを書いてみたいと思います。