2015年11月10日火曜日

「現代音楽」と「現代の音楽」


今日は、作曲の観点から音楽のジャンルについて、少し思うところを書かせてもらいたいと思います。(今回はMusical Theatreについては含んでいません。)

「現代音楽 (Contemporary Music)」という言葉がありますが、Wikipediaによるとその意味は「現代におけるクラシック音楽の延長線上の音楽」だそうで、簡潔ながら的確な定義だと思います。

それと対比して、「現代の音楽(Music of our century)」という言葉もあり、こちらは「21世紀現在では、ポピュラー音楽でも現代音楽でもない音楽を指す言葉として使われる率が多く」なった言葉だと定義されています。

表現上は非常に似ていますが、両方の言葉が必要であったことは大変興味深いです。

私自身の曲に関しては、後者の「現代の音楽」に含まれると考えています。これまでに最も多く接してきた音楽はクラシック音楽ですが、作曲の方向性としては、過去の作曲家たちの偉大な遺産を受け継いでその地平を広げようというよりは、それらを自分というフィルターに通した時に何を好きだと思って自分の中に残っていくのか。それらを集めて自分の世界観で再構成するというような、大変個人的な活動をしているように思います。

ただ、実際のところはliving composer(存命の作曲家)として、便宜上は私も現代音楽のくくりに入れてもらうことが多く、複数の作曲家の合同コンサートに載せてもらった場合などは私の曲は浮いてしまうことが多いです。真摯に書いた曲であれば、どのような曲であれ、発表するにあたって引け目を感じる必要はないはずとも思うのですが、コンサートとしては一曲だけ若干ジャンルが違うような曲が入っていると、お客さんが何を期待して聴いていいのかわからなかったり、「あれはなんだったの?」と思ってしまうことはあると思います。

音楽は聴いてみるまでわからないということと、形がなく比較的抽象的なものであるということから、あまりはっきりとカテゴライズすることが憚られる一方、それゆえに実際はかなり違うものが大きな枠組みの中に入れられている状況はあると思います。

過去に作られた名作をそのまま再現するようなこと、または考え抜いていない作品などであれば、あえて作曲する必要もないと思いますが、しかしもし自分が心底良いと思うような作品が書けたのであれば、それを演奏してもらえる機会を見つけること、そしてそれを楽しんでもらえる人にお届けすることは、作者としての責任のようにも思います。

そのためにも、自分の作品がどういうジャンルにあたるのか、それを理解しておく事は大切なことなのでは、と最近思うようになりました。

現在私が目指しているのは「絵本」のような作品です。美術館に飾られる美術品のような「クラシック音楽」と、暮らしを彩るデザインのような「ポピュラー音楽」の間の、時々手にとって楽しんでもらえるような、「絵本」のような音楽を書いていけたらと思っています。