2013年5月16日木曜日

日本的な物

最近はいくつか並行して作曲に取り組んでいるのですが、そのうちの1つが数日前に仕上がりました。

仕上がりがぎりぎりになってしまったのですが、今月末にあるコンサートの為の曲で、テナーソロと弦楽四重奏のための2分半ほどの曲です。

歌詞は、百人一首の中から権中納言敦忠による「逢い見ての 後の心に くらぶれば むかしは物を 思わざりけり」で、メロディーは和歌を読む時の節をモチーフにしています。

中学時代に百人一首を暗記した中で、ほとんどの歌は記憶から抜け落ちてしまったのですが、この歌だけは何か好きで頭に残っていました。曲としては今回もあえて理論的に組み上げたりせず(いつも結局そうなってしまうのですが。。。)、自分の中にある日本的な物をかき集めたらどのような形になるか、と楽しみながら書きました。

そして今日はひとまず書き上がった区切りに、一人ランチといいますか、ハンバーガーを食べて来ました。

お店の外の、ビルの谷間の中庭のテラス席でハンバーガーを食べながら、「なんだか今日の日差しと空の色、風の感じは日本っぽいな。」と思いました。そういえば、アメリカに来てからも折に触れてそう感じる瞬間があったと思い、少し考えました。

結局日本的な物を作るには、必ずしも日本の物を使う必要はなく、感覚の問題なのかなと思いました。日本で見聞きして育った「こういうものが美しい、懐かしい」という感覚があれば、どこに行っても日本的な物、風景、瞬間というものを見つけられるのではないかと。。。

今回の曲の中では部分的に日本の楽器を模倣したり、日本の音階的なメロディーを使ったりもしましたが、ムードを描き出す為にはアメリカに来てから学んだ対位法を主に使っていますし、歌ってもらうのもオペラシンガーのテノールです。この曲を聴いて全体として「日本的だ」と、日本人に感じてもらえたら嬉しいなあなどと楽天的なことを思っております。