2016年3月17日木曜日

"procrastinator" (後回しにする人)


英語にあって日本語にぴったりの訳語がないものに、"procrastinator"という言葉があります。"procrastinate"が「後回しにする」という意味なので、「後回しにする人」ということになるのですが、この言葉の持つ独特の「私それなんだよね。やっちゃうんだよね。」といったニュアンスがうまく出ずに残念です。

その「後回しにする人」がなぜ後回しにしてしまうのかについて、とても面白く、かつ見事にそのメカニズムを説明したTed Talksがあったのでご紹介したいと思います。まだ日本語の字幕がついていないので、そのままお楽しみいただけないのが残念ですが、概要をかいつまんで説明させてもらいたいと思います。

話し手はTim Urbanさんで、自身の「後回し」にしてしまう傾向に向き合い続け、経験とその分析から導き出した理論をブログで発表したところ、多方面から共感が寄せられたそうです。


彼の理論によると、後回しにしてしまう人とそうで無い人の頭の中は若干違うそうです。どちらにも頭の中に「理性的な判断をする者」がいて、人生の舵を切ろうとするのは同じなのですが、後回しにしてしまう人の頭の中には彼に加えて「すぐに楽をしたがるお猿」も住んでいるそうで、仕事に取り掛かろうとすると、そのお猿が船の舵を奪って現実逃避へと向かわせてしまうのだそうです。「理性的な判断をする者」は理性的な判断をするのは得意なのですが、お猿を止める術は知らないので、唖然としながら状況が悪くなっていくのを見守ることしかできません。そしていよいよ仕事の締め切りが間近に迫ったところで、もう一人のキャラクターが登場します。「パニック・モンスター」と呼ばれるこのキャラクターは、登場するなり文字通りパニックを起こします。すると、後の二人もつられてパニックになり、お猿の方は木の上へと一目散に逃げてしまいます。そうしてようやく「理性的な判断をする者」が舵を取り戻すことができ、なんとか無理を重ねて締め切りに間に合わせる。ということが起こっているそうです。

しかし、ブログに寄せられる感想を読む中で、「後回し」という現象もさらに2種類に分かれることがわかったそうです。一つは上記の状態なのですが、もう一つは締め切りのない目標に対する「後回し」だそうです。締め切りがないということは、「パニック・モンスター」が登場しないので、結局達成されることがなく、より後悔が深いそうです。

そして、 Urbanさんは締めくくりに、スクリーンに小さな四角がびっしりと並んだ図を見せてくれます。一つの四角が1週間を表し、90年分のそれを一つの画面の中に並べたものだそうです。確かに一つ一つの四角は小さいですが、全部を見渡すとそれほど多くもありません。そして、実際はもうそのうちのかなりの量を使ってしまっているので、これを見たらやろうと思って後回しにしていることを、そろそろやらねばという気にもなりますよね!ということでtalkが終わります。

誰もが経験のあることを、面白おかしく、かつ的を得たキャラクターに置き換えて、よくぞここまで明快に解明してくれたなあと思います。彼のブログを見ると、さらに詳しく説明されているので、よろしければぜひチェックしてみてください。

私なりに思ったことですが、「後回し」や「現実逃避」の結果、時に役に立つ雑学が身につくこともある(このtalkも現実逃避の中で見つけたものなので。。。)と思うと、完全に無駄なことはないかもしれないなとは思いたいのですが、目標に向かって進んで行くためには、やはり可能な限りお猿に舵を取らせないようにせねばと思います。。