2012年10月24日水曜日

エンターテインメント

レストランでピアノを弾くバイトを始めてから、路上のミュージシャンに以前より興味を持つようになりました。

NYの地下鉄では、乗り込むやいなや、電車が1区間走る間に一曲披露して、お金を集めてまた次の車両に移っていくというミュージシャンもよく見かけます(ギター弾き語りやアカペラ等)。実際上手だったりもするのですが、それなりに混み合った車両の中、「なんだか押し売りだなあ。」と思ってあまりチップを入れたこともありませんでした。

けれどこの間、日も暮れかけた時間帯にプラットフォームで、ある二人組がギターをつま弾きながらスタンダードなジャズナンバーを歌っていました。私はコンサートに行こうと電車を待っていたのですが、見渡すと周りの多くの人たちが仕事帰りのようでした。1日の仕事を終えてほっと家路につく人たちの気持ちを慰めるような、まったりする音楽にとても共感して私は数ドルチップを入れました。この人たちは今ここにいる人たちの為に音楽を弾いているなあと思い、そしてその音楽に感謝しました。

そんなこともあって考えたのですが、人が生きる為にはエンターテインメントは不可欠なのじゃないかと思います。一人で食事をしているとき、電車を待つとき、ふと人生について考えたりします。その瞬間はとても貴重なものですが、そればかりでは人生がシリアスになりすぎます。人は一人で抱えきれない人生を、時に人に胸を借り肩を貸し、それぞれの人生に責任を持って一生懸命生きているのだと思います。人間は静寂を恐れて音楽を生み出したと聞いたことがありますが、エンターテインメントはそのように人とのつながりで得られる安心を形にしたものなのではないかと思います。

もちろん衣食住に比べればエンターテインメントの必要性は低いのだろうとは思います。けれど、人はどのような危機的状態でどんなに悲しくても、その気持ちを中断してともかく何かを食べ、トイレにも行き、ある程度眠らなければならない。結局どんな時にも人は生きようとしていて、それはある意味シュールでもあり、またたくましいことだと思うのです。だからこそエンターテインメントも、そのような人の生きる意志を励ますという役割で、その重要性は思っているより大きいのではないかなあと、最近そんなことを考えています。