2010年3月20日土曜日

ガラモン・ソング

子どもの頃短調の曲が怖かったです。

おばあちゃんからもらった童謡のはいったテープを寝る前に繰り返し聴いていた記憶がありますが、その時も短調の曲になると(今思えば名曲だったと思うのですが・・)確か焦って早送りしていました。

そうこうしていたのはピアノを習い始める前だったはずですが、そういう身近なところで意外に長調と短調の違いは感じていたのかなと思います。

さておき、そんな私が最も恐れていた曲と言えば…。

配島邦明作曲 「ガラモン・ソング」
「世にも奇妙な物語」のテーマソングです。

今、ピアノの曲を書いていて参考にしたいと思って昨日勇気を振り絞って夜中に聴いてみました。

というのも、今の今までこの曲は「音楽」とか「曲」としてではなくて「世にも~」のテーマ曲=直聴(≒直視)したらだめ!と思い込んでいましたので…。それだけ怖い印象をこの曲はどういう風に作ってあるのかなとふと思いまして。

聴いてみて勝手に思ったことをちょっと自分の為にメモさせてもらいます。

聴き始めると、まず冒頭からして「来た~…。」と言う感じなのですが、音が分散してあって次の音がどこから来るのか読みにくい、というところからも怖さは来ていると思いました。が、音の組成自体は長三和音と短三和音からだけです。音をぶつけているわけでも、調性がないわけでもなく、馴染みのある響きのはずなのになんでこんなにそわそわするのか…。思ったのは、確かに転回形が違うだけでも和音の印象は随分かわりますし、リズムと音色ももちろん、でも何よりメイジャーとマイナーを行ったり来たりして定まらないところかなと思います。

それこそ、世にも奇妙な物語が普通と変わらない日常とつながっていてぞっとする、というストーリーのように、はじめから「こっちに行ったらあぶなそう。(短調)」とわかっていればあまり怖くはないのだと思います。

そしてあの耳から離れない、減五度音程間を上って降りるパッセージ。上行は全半全半、下行は半半半半のステップワイズモーションです。全半全半…でできる音階を弾いてみると、なかなか恐ろしい響きがしました。

それから、中間部分の部分も長調でありながら何かこれから怖いことが予感させるような、哀れみとフェイクの、決して安らげる長調ではありません。 もっとちゃんとアナライズすれば旋法や対位法など緻密に構成されていそうで、音色の選び方も見事だと思うのですがともかく、この曲はいろんな面で素晴らしく成功していると思いました。

どんな音楽がどんな感情や印象を人に与えるのか、ということを体得して作曲で使えるようになったらすごいだろうなと思います。

どういうご縁かようやくこの曲を曲として観賞することができるようになったのはよかったとも思いますが、それでもやっぱり聴いているときにもしも「ガサッ」と物音でもしようものならぎくっとせずにはいられません。